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YUKI
 1993年、JUDY AND MARYのボーカルとしてメジャーデビュー。2002年ソロデビュー。
 YUKI OFFICIAL SITE

PRISMIC (2002)

 ソロ一枚目。本人の作曲が多い。やや暗めなのはJAMの反動か。低い声も聞ける。
 歌詞も変わった。根底には私的な喜びや悩みがあるのだろうけど、どこか抽象的。リスナーに寄り添いすぎない感じ。

 バンド時代は「奇をてらう」反抗期の少女みたいだった彼女。雰囲気は落ちついたけど、我(が)の強力さ、内から出てくる魅力は健在。


11.ふるえて眠れ
 スイーツというスラングがあるけど、ユキもスイーツ的女性ではないか(偏見)。オシャレなモノ・カッコいいものの影響を受け、取り込もうとする。そんな彼女の困難、それが変えられない 誰似でも あたしはうすっぺらで 本物にはなれないというフレーズなのか。
 皮肉にも、このフレーズ自体YO-KINGの受け売りにも思える(昔「ぼくは本物じゃない」って歌っていた)。誰でもそうだと思う。作詞や作曲(表現全般)は過去に見たり聞いたりした寄せ集め・ツギハギのようなものだろう、極論。

 Dailymotion


12.呪い
 笑顔をならべて 見ない振りをして 頑張ってきたんだ
 もう歌えないわ

 歌手活動の転機を迎えた気持ちであろう。何か伝えたいのか伝えたくないのか。分かるような分からないような。この頃は抽象度が高かった。
 YouTube [LIVE(2002)]

commune (2003)

 前後のアルバムが強烈なので霞みがちだが、かなりお気に入り。 淡々として、のびのびしていて、少しアンニュイ。流行に依らない色あせない楽曲がそろう。
 制作陣は會田茂一・スネオヘアー・Caravanといった新たな顔ぶれ。いかに頭の中にある音を鳴らすか、試みているような印象。 その甲斐あってか、楽曲の中に当時のYUKIのみずみずしい感受性・気持ちの機微が鮮やかに記録されているように思う。心地よく聴ける。


8.センチメンタルジャーニー
 夢を持ってるだけでごはんもおいしく食べられる
 のびのび感が良い。
 YouTube [PV]


9.ファンキー・フルーツ
 ブーツのスタッズにはパティスミスとスージースー
 これずっとスージー・ズーだと思っていた。アヒルとテディベアではなく、二人ともパンクな女性ミュージシャンであった。

 ニコニコ動画[LIVE] 2004年のツアー。エネルギッシュに歌って踊るYUKI。このDVDは編集もアングルも良い

joy (2005)

 華やかでライブ映えする曲が多い。
 セールス的に成功しYUKI=ボブのイメージを浸透させた。


3.ハローグッバイ
 蔦谷好位置が作曲したシングル曲。この曲がこれ以降の方向性を決定づけた。

 私はどんどん変わってく はにかんだり舌をだしてみたり さびないわ
 YUKIは何故か舌を出してるイメージある。
 この歌詞には、確かにな…と思わされた。キャリアが長くても作風やキャラクターがずっと一定な人がいる。安定して良いものを作り続ける職人のような人。 一方YUKIは変わっていくタイプの人だろう。飽きっぽいのか、昔は良かった的な周囲の声に耳を貸さないのか。分からないけど、いつも音楽に新しいアイディアが盛り込まれていて、こういうのも良いでしょ?とドヤ顔で聞いてくるようなピュアな衝動みたいなものを感じる。 その新境地が合うか合わないかはリスナー次第である。でもその心の赴くままの遊び心がYUKIのパフォーマンスの魅力であろうし、その繰り返しで表現の幅が広がって今まで繋がってきたのだと思う。


8.WAGON
 ライブの定番でありハイライトとなる曲。

 YouTube [LIVE] 2004年の映像。ゲッノー!!サティスファクション!!とローリング・ストーンズYouTubeばりに叫んでいる。こういうミーハーさも持ち味。気持ちよさそうに歌って踊る姿に釘づけ。映像は魅力が感覚に訴えてくる。文章で表すのは野暮。ライブが良い。

Wave (2006)

 製作時期から見ても作風としても前作とセットとなるようなアルバム。構成的にシングル集のような印象になってしまうがアルバム曲も粒ぞろい。
 仮タイトルは「ribbon」。ファンからの声で自分の曲が人と人とを結びつける役割をしていたことに気づき、結びつけるものと言えばリボン、という案だったようだ。


1.長い夢
 文脈で語られがちな曲だと思うが曲そのものは前作と同時進行で完成していたわけで、曲自体だけを見ると現実を投影せずにファンタジー的な曲を作っていた時期の代表曲であろう。疾走感のあるメロディ。何かから逃げているようでもあり、何かを探して追いかけるようでもある曲世界。鳥肌が立つような曲。

 ニコニコ動画 [LIVE] これ、いつなのだろう

うれしくって抱きあうよ (2010)



9.うれしくって抱きあうよ
 YUKI流AOR。キャリアにおける最高傑作ではないだろうか。最初聴いたとき「こんな曲も出来るのか……!!」と思った。なんだかんだ、ライブ映えするアッパーな曲こそ真骨頂だと思っていたので不意打ちだった。
 オーチャードホールのMCでは「ふがいないやで否定はしたので、今度は全肯定の歌を作りたくなりました」といったことを言っていた。 悲しみもエロスも肯定して生きる喜び・愛する人と接する胸の高鳴り……そういったものが文学的かつキュートにつづられている。このあたりから文才が開花してきた気がする。
 聴くだけで幸福感がひしひしと伝わってきて、感極まってしまう。


11.汽車に乗って
 函館から上京したときの体験がモチーフ。素朴な曲で素材の良さ・声の良さを存分に味わえる。

 これだけ素朴な曲をシングルにしたのは何かふっきれた感じがするが、作詞に関してもターニングポイントだったと思う。以前YUKIは「現実的な歌詞は書かない。ステージではつらいことを忘れさせるような楽しいことだけのファンタジーを見せたい」といった旨のことを言っていたように思う。 でもこの曲や同年の「メッセージ」あたりから、ルーツを歌詞にすることに抵抗がなくなってきた印象。
 年々、強く楽しく大きな人間になっていくYUKI。意識的に楽しさを作りこまずとも、自然体で惹きつけられるステージが出来るようになってきた自信の表れか。

 YouTube [PV] これ以降ロング(地毛?)が多い。モヤがかかった映像だがかなり幼く見える。自分の可愛いさに自信がある感じが見てて気持ち良いし、可愛いって大事だと思った。

YUKI“The Present”2010.6.14,15 Bunkamura Orchard Hall (2010)

 2夜限定でオーチャードホールでオーケストラと共演した模様を収録したライブ盤。この時はキャパの都合、チケットの制限が厳しかった(一人一枚までだったか)。貴重な音源である。

 YUKIのライブには非凡なものがあると思う。際立っているのは、のびのび、堂々としているところだ(言葉にするとつきなみだが)。
 数千人を前に、一瞬一瞬を享受するように朗らかに歌って踊っている。 何の迷いも曇りもないように、ただひたすらに楽しんでいるようだ。まっすぐ豊かに生きている誇らしさが感じられるのか、特別感動的な曲でなくとも胸を打つ。否応なしにスター性が感じられるが、その一方で平凡な人の普通の日常でも気持ちを込めて送ることの大事さ、生きることの切なさのようなものも思い起こさせてくる。

 そういったスタジオ音源だと伝わらない自然体の力、オーケストラや観客と呼応する瞬発力を堪能できる。CD音源の中でも出色の出来だと思う。 以下のリンクの映像はテレビ放送時のもので、本作は初回盤にだけ3曲分の映像がついている。ぜひフル映像化して販売してほしい。


disc1
4.WAGON
 この時ニコニコ動画と同年のツアーでは、山下達郎の「DONUT SONG」をくっつけたビッグバンドバージョンが披露された。

megaphonic (2011)

 YUKIがやりたいものとファン(自分)が聴きたいものが一致したアルバム。
 いちファンは「今回はそう来たか……!」と、作風の変化を見守るのみ。だが、声質的にもライブ映えするのもやはりバンドサウンドでは、とずっと思っていたのでドンピシャだった。 Wild Ladiesはバンド時代を思い出す曲だと言っていた。

 もちろん昔にしかないものもあるが、キュートで朗らかで彼女の人となりが出ている歌詞、存在感は豊かになっていってるように思う。 キャリアの積み重ねでたどり着いた境地であろう。


13.集まろう for tomorrow
 リラックスした歌い方が新鮮。以前の美意識ならば、こういうタイトルはつけられなかったと言っていた。
 蔦谷好位置と組んでいた時と比べてチープな感じになってきた、と言った人がいた。近年は格好良さよりも、楽しさなのか。飾り気のない言葉の方がゴキゲンになれるのか。
 YouTube [LIVE(2011)]

POWERS OF TEN (2012)



disc2
12.世界はただ、輝いて
 「ソロ10周年を自分で祝う曲」だそう。
慈愛があって、良い歳のとり方しているなという印象の声。

 芸術家?のインタビュー記事に触発されて作った曲とのこと。ある芸術家(名前は忘れたとのこと)が発した「表現者たるもの、いつでも自分の周りの世界が輝いて見えなければならない」という言葉に共感したのだそう。いつでも自分が機嫌良くあるべき、ということか。

 間奏で語りがあるが、そういうものもサマになるスター性がYUKIにはある。SOUNDS OF TEN東京ドームのときの、花火のように 消えてしまうから~のタイミングで天を見上げてキョロキョロしていた仕草が印象的で、ミュージカル女優のようであった。
 YouTube [PV]

FLY (2014)

 ダンスミュージック、R&B的な要素を盛り込んだアルバム。
 正直、あまりピンと来なかった。声質、歌い方的にR&Bは不向きなのかとも思った。ただ以前共演した矢野顕子との親和性も高かったし、ソウルフルでjazzyなYUKIは格好良くなるイメージがある。可能性を感じるのでこの方向性を模索してほしい気持ちがある。


14.坂道のメロディ
 アニメ「坂道のアポロン」OP。菅野よう子作曲。

 この頃からタイアップ曲が増えていく。そのおかげか、作品を上手いこと曲作りのネタとして活用し、曲を作品に寄せていけるようになったと思う。るろ剣のOPなのに何故かキャンディ・キャンディをイメージした曲を作っていた頃を思うと本当に変わった。近年のYUKIはどんな球が飛んできても笑顔でホームランを打ち返せるような大きな人間になった感じがする。
 YouTube [坂道のアポロンOP]

きれいなひとりぼっちたち (2016)

 番外編。銀杏BOYZのトリビュートアルバムだが、YUKIで始まりYO-KINGで終わるので。
 銀杏の魅力は童貞男子中学生の部分をずっと失わない峯田のアイドル性が大きいと思うが、峯田不在のこのアルバムを聞くと曲自体の魅力が分かる。


1.漂流教室
 青春感がある。直近でカバーしていたのも「卒業」や「自転車泥棒」だったし近年のYUKIは中高生・青春のスイッチが入っているのか。

 銀杏とYUKIと言えば「駆け抜けて性春」である。あの曲では「童貞少年の妄想が作り上げた幻の女の子」パートをYUKIが歌っていた。あの頃のやや鼻につくようなアニメ声は機械っぽくもあり、架空の女の子パートが似合っていた。当時、峯田はYUKIのことを「衝撃的、天使だと思った」的なことを言っていたように思うし、あれは当時の実際の峯田とYUKIのキャラクターが曲とピッタリだった。